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目次
話の概要
事件があって、主人公が戦闘を通して解決するタイプの物語。
揉め事処理屋(※何でも屋みたいな存在)である主人公真九郎を中心としたキャラの会話が面白い。キャラの造形がしっかり作りこまれており、どのキャラも魅力的で読者を飽きさせない。
作者である「片山憲太郎」は「西尾維新」(『クビキリサイクル』をはじめとする『戯言シリーズ』)と作風が似ているといわれる。
2chとかでも、パクった、パクっていないだとかごたごた騒がれる作品である。
確かに、物語の雰囲気は似ていると、私も感じる。
たしかに、『紅』は、影響は受けたかもしれないが、
『紅』は『戯言シリーズ』にない独自性や相違点があるため、
パクってはいないと私は考えている。
『戯言シリーズ』と『紅』の共通点と相違点
共通点
- 両作品も、女の最強キャラが存在する。
『紅』では、「柔沢紅香」、『戯言シリーズ』の「哀川潤」 - 世の中全体(物語の舞台)が、独特のネガティブな雰囲気。
- 設定の類似性(表に対する、裏の世界が存在し、数字で表現されている)
『紅』:表御三家、裏十三家
『戯言シリーズ』:殺し名七名、呪い名六名(暴力)、四神一鏡(財力)など - 現代社会を舞台にした、人外な力を持つキャラの戦い
相違点
- 物語のネガティブさの方向性が微妙に違う。
『紅』は、殺伐とした暴力的な雰囲気。弱者が強者の食い物にされる。
『戯言シリーズ』は、厭世感。努力しても報われない。才能がすべて。 - 視点の置き方が違う
『紅』は、主人公である「真九郎」を基本的な視点とした3人称。(※後半で詳しく考察)
『戯言シリーズ』は、「いーちゃん」こと「ぼく」による1人称による語り
人称
基本は、主人公である真九郎を視点とした3人称。
主人公からほとんど視点が動かない。
1人称の小説と比べ、3人称の最大のメリットは、
視点を動かしやすいところにあると私は考えている。
逆に1人称の小説のメリットは、主人公の心理を掘り下げやすく、
その心の動きを描写しやすいことだろう。
そういう意味で、ライトノベルで、
3人称なのに、視点をあまり動かさないというのは、珍しいかな。
推理小説では、そこそこありそうな形式ではありそうだが。
(ここ最近あまり推理小説読んでないなー)
なぜなら推理小説なら、多くの場合、助手役に基本的な視点を置かれる。
そして、推理小説の面白みは、謎とその解決のプロセスにある。
わざわざ、助手役の1人称で書いて、助手役の心理を掘り下げる必要性はない。
むしろ、3人称にして客観性を担保した方が作品としてフェアに仕上がるのではないかな。
(あまり、推理小説に詳しくないけど)
この作品は、先ほども書きましたが基本3人称(「真九郎は~」)であるが、
一部1人称チック(「俺は~」)になっているシーンもある。
特に、主人公の心理を丹念に追っている描写とかで。
P237
俺は、これからどうするべきなのだろうか
P277
俺にできることを、あの子に見せてやりたい
1人称と3人称が混じっているというよりは、
「~と、主人公(真九郎)は思った」という文が省略されているとされていると私は、解釈している。
この作品は、基本は3人称なので、1人称で感じるべたついた感じがない。
なんていえば、いいのだろうか。
普通の1人称小説は、視点の主の思考を追うことになるから、読み手と主人公の距離が近い。
それが原因で言語化しづらいが、べったりした感じを覚える時がある。
この作品は、基本3人称で、場合に応じて、1人称に近い語りになる。
個人的に、この独特の距離感はかなり好き。
あと、主人公による3人称が基本と書いたが、完全に主人公のみの視点ではない。
p276
紫は、嗚咽を交えて訴える。自分の、本当の気持ちを。
紫(ヒロイン)視点。
三人称小説の地の文で、あるキャラクターが己の気持ちを、言及する時、「私」「僕」「俺」などの1人称は、基本的には使えない。
こういう時に「自分」という言葉はわりと便利な言葉として使われているきらいがある。
(「己(おのれ)」も使われるが少し硬い)
p278
彼は悟ったのだ。真九郎が、自分と同じステージに上がってきたことを。
彼(鉄腕)の視点というよりは、物語という舞台を眺める観客のような視点。
戦闘描写の際に、視点を動かしたくなるというのは、わかる。
戦闘の際に、敵対者の心理を描かれないと、その戦闘に対する理解が片手落ちになる。
とまあ、こんなかんじで、この作品では、視点は、主人公からずれるときもある。
(同じ作者が書いた『電波的な彼女』は、『紅』以上に視点が主人公から動かない)
関連記事
同一作者が書いた作品『電波的な彼女』。『紅』との違いなどを考えてみると面白い。
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