小説

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物語も「三度目の正直」-3回目でひっくり返すパターン

童話で見られる「三度目の正直」型 童話では、3回目でひっくり返すパターンがよくみられる。 私は、そのよう物語を勝手に、「三度目の正直」型の構成と呼んでいる。 『三匹の子豚』と『オオカミ少年』という二つの物語を通して、説明したい。 『三匹の子豚』 あらすじ 起:1匹目の子豚が作ったわらの家が、狼に吹き飛ばされる。 承:2匹目の子豚が作った木の家が、狼に吹き飛ばされる。 転:3匹目の子豚が作ったレンガの家を、狼は吹き飛ばすことができなかった。 結:業を煮やした狼は煙突から侵入する。だが、3匹目の子豚は見事、返り討ちにする。めでたし。めでたし 「因果応報」型の物語。 しっかり準備しない子豚は、狼にやられる。 しっかり準備した子豚は、その努力が報われる。 『オオカミ少年』 あらすじ 起:おおかみが来... 続きを読む

『羅生門』(芥川龍之介)での蟋蟀の役割-時の経過を示す

時の経過を示す手法& 読者の視点を引き込む手法 この記事では、芥川龍之介の作品を扱う。 作品を通して、 1:時間の経過をさりげなく示す手法 2:読者の視点を、惑わすことなく、物語の世界へつなげる手法 を紹介したいと考えている。 『羅生門』 日本人であれば、芥川龍之介の『羅生門』を 教科書を通して一度は読んだことはあるはずだ。 著作権が切れているので、青空文庫で、無料で読むことができる。 (→こちらへ) 蟋蟀きりぎりすが登場するのは2回。 1回目は、 ある日の暮方の事である。一人の下人げにんが、羅生門らしょうもんの下で雨やみを待っていた。  広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗にぬりの剥はげた、大きな円柱まるばしらに、蟋蟀きりぎりすが一匹とまっている。 2回目は、 ... 続きを読む

『たくさんのタブー』(星新一)-オチの感想・解説

作品概要 ショートショート作家で有名な星新一の短編が、20編収録された作品 話の解析 20編の話がどのような内容か端的に書きます 以下ネタバレを含みます。 (いきなりネタバレする人が嫌な人のための、障害物) 先に読んでおきたい関連記事 短編のオチの三本柱-オチのパターンを分類する   「解決策」:ループ。妻殺しのループ 「重要な部分」:非日常→単純な仕組み。背中に痛みを与える装置で人をやる気にさせる。痛みでやる気を出させるという真逆さが面白みの一つ。大がかりな話(社会の急所)の裏は、大したことがなかった(嘘っぱち)というのがオチ。 「おかしな青年」:ループ。誤診で死んだ少年が消えない幽霊として現れる。 「逃亡の部屋」:意図した行為とは真逆の結果。逃亡の末、ついには自殺を... 続きを読む

短編のオチの三本柱-オチのパターンを分類する

短編のパターン 短編を読んだときに、 この短編のオチは、前読んだ別の短編とオチが似ているな。 そんなことを思ったことはないだろうか? その既視感は、正しいと思う。 人が面白いと思うものにはある程度パターンが存在するはずである。 そして、書き手は意識的か無意識的にか、パターンというものを捉えて、 それを文字という形におとしこんでいる。 オチとは何か? オチのタイプを考える前に、 そもそも、オチとはいったいなんなのかについて考えたい。 とりあえず、オチの特徴を挙げていくと、 1:オチは、話の結末にある。 2:オチがある→面白い 1つ目のポイントだが、 オチというのは、物語の後半にあるというのが、多くの人の共通認識だろう。 ただ、長編の場合は、小さな話の積み重ねになるので、 話の最後ではないが... 続きを読む

主観的な表現する人は文章下手-料理の描写を例に解説

味の良さを表現するには? 想像してください。 今、あなたが、今までにない、最上の料理を食べたとしましょう。 そして、離れた友人に電話で、料理の素晴らしさを伝えたいとします。 あなたは、どう友人に料理のよさを伝えますか? 味が良いことを示す言葉は、たった3つ 日本語において、味のよさを直接示す言葉は残念ながら、多くありません。 「うまい」「おいしい」「美味だ」 私の知る限り、この3つしかありません。 「美味(びみ)だ」という堅苦しい言葉を、日常的に使う人は、私はあまり見かけません。 また、「おいしい」の漢字を振ると、「美味しい」です。 なので、「美味」という漢字は多くの場合、『「おい」しい』の方に使われるイメージが強いかと思われます。 現実的には、「うまい」か「おいしい」の二択になるでしょ... 続きを読む